白生地遊び


その1

不思議な売り込み



ある時、よくあるような宣伝のはがきが来ました
あなたに反物が当たりました
いついつに賞品の見本を持って上がります。

待っていると、本当にやってきました。
ご大層に桐箱に入れた白生地の反物を白手袋をはめた手で持って見せてくれるのです。
付下げ模様に中国刺繍がしてあります。
いかにすばらしい反物かとうとうと口上書きを述べます。
そして、引き替え証書と称する物をくれます。
ある期間に この証書を持って展示会場に来ればこの反物をくれるというのです。

さらにこの期間内だと中国の薬草染めをお値打ち価格でしてくれるというのです。

ははぁ、これは、商売の一手だなぁ、きっと染めをしてくれるなら白生地をただでくれるというのだろう、
お金のいることは全部断れば、損はしないだろうから、
見るだけ見てきてやろうと思いました。
幸いその期間に仕事の休みの日があります。


行ってみるとそこは着物の展示場でした。
あちこちで試着している人たちがいます。
多くは嫁入り道具としての着物を見立てている母娘のように見受けられます。
さては私は嫁入り時期の娘をもつ母親の世代として選ばれたのだな。
しかし私には息子しかいない。

で、白生地を染めるのにどの色がいいか、決めさせようとする販売員になんとかかんとか言って断りつつ、
商品をあれこれ見て回りました。

とうとうあきらめた販売員は、
では、残念ですが今回は反物を白生地のままでお渡ししますので
どの模様がいいですか?
刺繍は○○種類あります。

・・・・・・?

え?本当にただでくれるの?(内心ウッソー、でもヤッター!)

しかしあの攻撃をかわして、ただで白生地だけもらっていく人も滅多にいないだろうなぁ。
普通なら、白生地だけもらっても困っちゃうもんね。昔ならいざ知らず。





さて、めでたくただで手に入れた白生地でしたが
これをどうするかの当てはありませんでした。
このような時、あわてるのは禁物です。
そのうち良いアイデアが浮かぶはずです。

続く

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